「墨廼江 特別純米」と蕗味噌
ほろ苦さと旨みが調和する春の一杯
3月に入り、少しずつ春の訪れを感じる季節となりました。厳しい寒さを乗り越え、草木が芽吹くこの時期には、冬にはなかった爽やかな苦みを持つ春の食材が登場します。その代表格が「蕗の薹(ふきのとう)」です。
独特のほろ苦さと芳醇な香りを持つ蕗の薹は、春ならではの味覚として親しまれています。その風味を存分に楽しめるのが「蕗味噌」です。細かく刻んだ蕗の薹を味噌とともに炒め、砂糖やみりんで甘辛く仕上げたこの一品は、奥深いコクと爽やかな苦みが織りなす絶妙な味わいを持ち、日本酒との相性が抜群です。
特に、宮城県石巻市の墨廼江酒造が手掛ける「墨廼江 特別純米」と組み合わせることで、蕗味噌の魅力がより一層引き立ちます。この酒の持つ端正な旨みと、すっきりとしたキレが、蕗味噌のほろ苦さと見事に調和し、春の味覚を存分に楽しめるペアリングとなります。
蕗味噌と墨廼江 特別純米の相性
「墨廼江 特別純米」は、宮城県産の酒米**「五百万石」**を使用し、清らかな北上川の伏流水で仕込まれた一本です。穏やかで上品な香りと、米の旨みをしっかり感じられる柔らかな口当たりが特徴でありながら、すっきりとした後味を持ち、料理と寄り添うバランスの良さが魅力です。
一方、蕗味噌は味噌のコクと甘み、蕗の薹の爽やかな苦みが合わさった、濃厚で奥行きのある味わいを持ちます。この味わいを墨廼江の端正な旨みが包み込み、最後にすっと消えていくようなキレの良さが、味噌の甘みや蕗の薹の苦みを引き締めます。
口に含むと、まず蕗味噌のほろ苦さが広がり、それを「墨廼江 特別純米」のふくよかな旨みが優しく受け止めます。そして、後半にかけて酒のすっきりとした酸味とキレが心地よく広がり、口の中をさっぱりと整えてくれます。お互いの個性を尊重しながらも、見事なバランスで調和するペアリングといえるでしょう。
温度帯ごとの楽しみ方
「墨廼江 特別純米」は、幅広い温度帯で楽しめる酒ですが、蕗味噌との相性を最大限に引き出すためには、温度を変えながら味わうのもおすすめです。
〼 冷酒(10℃前後)
– 透明感が際立ち、シャープなキレが蕗味噌のほろ苦さと対照的なコントラストを生み出します。すっきりとした飲み口が特徴で、蕗味噌の甘みを引き締める効果もあります。
〼 常温(15℃~20℃)
– 米の旨みがよりふくよかに感じられ、蕗味噌のコクとよく馴染みます。甘みと苦みのバランスが最もよく取れる温度帯で、料理との一体感を楽しむことができます。
〼 ぬる燗(40℃前後)
– 口当たりがまろやかになり、酒の甘みがより引き立ちます。蕗味噌の持つコクと芳醇な香りが深まり、じんわりと染みわたるような味わいに。特に、春先の肌寒い夜におすすめです。
春の訪れを感じながら楽しむ一杯
蕗の薹は、雪解けの土から力強く芽吹き、春の訪れを告げる食材のひとつです。そのほろ苦さには、冬を越えた自然の息吹が詰まっており、日本酒と合わせることで春ならではの味覚の奥深さを存分に堪能できます。
「墨廼江 特別純米」と蕗味噌のペアリングは、ただ単に美味しいというだけでなく、季節の移ろいを五感で楽しむ一杯ともいえるでしょう。寒さが残る春先の夜、ゆっくりと酒を傾けながら、春の味覚を味わってみてはいかがでしょうか。
この春、ぜひ「墨廼江 特別純米」と蕗味噌のペアリングで、季節の訪れを感じる贅沢な時間をお楽しみください。




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